2020年・2021年にかけて目覚ましい拡大を見せた仮想通貨市場。その理由として、Coinbaseによる米国市場上場・金商法改正による暗号資産の「金融商品」としての明記など、社会的信頼性を上げる多くの出来事が挙げられるでしょう。
しかし市場が拡大し資金流入が増えると、それを狙ったフィッシング・マルウェア等を通じたサイバー攻撃が増加する可能性が高いです。
これまで数多くの仮想通貨取引所がハッキングされ資産流出の被害に遭っていることから分かるように、取引所に資産全額を預けるのは必ずしも安全とは言えません。そういった背景から、仮想通貨投資家の注目を浴びているのが「ハードウェアウォレット」です。
そこで本記事では、国内に限らず世界各国のハードウェアウォレットを比較してご紹介します。
この記事の目次
オフライン環境で資産を守るハードウェアウォレット
紹介に先立って、まずはハードウェアウォレットの必要性について簡単に確認しましょう。
仮想通貨を個人で保管する方法としては、取引所アカウントの他にデジタルウォレットの利用が一般的です。デジタルウォレットは、大きく分けて「ソフトウェアウォレット」「ペーパーウォレット」「ハードウェアウォレット」の3種類。
この中で、物理的攻撃・サイバー攻撃の両方から資産を安全に保管するために最適なのがハードウェアウォレットです。オフライン環境下で安全に仮想通貨の秘密鍵を保管できるため、特に多額の資産を長期的に保有したいケースには、必須と言っても過言ではありません。
ハードウェアウォレットは少しずつ国内でも流通し始めており、市場には複数のオプションがあります。しかし、海外のハイクオリティなハードウェアウォレットすべてが国内で流通しているわけではありません。
自分の資産を守るための重要なツールなので、国内流通製品の中で選ぶのではなく海外製品も選択肢に含め、自分の投資スタイルに最適なプロダクトを選びましょう。
ここからは世界中のハードウェアウォレットから厳選した5タイプを比較しつつご紹介します。
関連記事:「サイバー攻撃から仮想通貨を保護する高セキュリティな「ウォレット」の選び方」
関連記事:「仮想通貨のセキュリティリスクとは?資産の7割は「HSM」で厳重保護」
『YubiHSM 2』スウェーデン発・世界最小のHSMハードウェアウォレット
【YubiHSM 2】は、認証セキュリティキーのパイオニア企業「Yubico社」が開発する世界最小のHSM(ハードウェアセキュリティモジュール)。Yubico社はGoogleなど世界の大手ITテック企業と協業し、その製品は160カ国以上に流通しています。
YubiHSM 2はUSB-Aタイプのフォームファクタに直接挿して使える仕様で、バッテリー・可動パーツのない「ナノ」フォームファクタ。防水・耐衝撃性に優れた設計が特徴です。
価格は一般的な仮想通貨ウォレットに比べると高額ですが、その値段に見合うだけの性能を備えています。
通常、ハードウェアウォレットは仮想通貨の管理にのみ特化していますが、YubiHSMは仮想通貨以外も含めデータ全般にトップクラスの保護を実装可能です。
米国政府における情報処理標準規格にも適合しうる「政府グレード」のサイバー攻撃耐性に加え、物理的な攻撃・干渉からもデータを守る隙の無い防御を実現しています。耐久性も高く、10年単位で使用できるため費用対効果も十二分。
YubiHSM 2は、デジタル・リアルのあらゆる脅威からデータ全般を守りたい投資家に最適の、ハイエンドなソリューションです。
関連記事:「【YubiHSM2】ナノサイズの次世代HSMが起こすセキュリティ革命とは」
『D’CENT(ディーセント)』韓国発・世界唯一の指紋認証ハードウェアウォレット
出典:D’CENT
D’CENTは、韓国を拠点とする「IoTrust社」によりリリースされた、世界初の指紋認証ハードウェアウォレットです。
D’CENTシリーズには生体認証ハードウェアウォレット・カード型ハードウェアウォレット・ソフトウェアウォレットの3種類があり、そのすべてを一つのアプリで一括管理できます。
ハードウェアデバイスはポータブル音楽プレーヤーのような形状で、中央に指紋センサー、その周辺に円形のコントロールボタンがある仕様。使いやすさを追求しており、Bluetooth接続を通じてワイヤレスに通信できるためポータブル性に優れています。
ユーザーは指紋認証を通じて素早くウォレットへアクセスし、トランザクションの承認が可能。トークンのスワップや多要素認証セキュリティなど追加の機能は備えておらず、無駄を極限まで削ることによって高い利便性を追求しています。
仮想通貨の秘密鍵を保護するため、クレジットカードなどの保護にも用いられる最高クラスのセキュリティチップを搭載することでサイバー攻撃に対して強固な保護を実現。
シンプルな仕様・Bluetooth接続・指紋認証による高い利便性と安全性の高い秘密鍵保管を両立させた、ユニークなハードウェアウォレットです。
参考価格:¥20,000~(国内相場)
『Trazor(トレザー)』チェコ発・多様な機能を簡単操作で実現するハードウェアウォレット
出典:Trezor
Trezorシリーズは、チェコを拠点とする「SatoshiLabs社」によってリリースされたハードウェアウォレット。22年時点では、最も人気のあるハードウェアウォレットの一つとして世界中にシェアを拡大しています。
Trezor Model One
Trezorシリーズ最初のモデルが【Trezor Model One】です。プラスチック製なため軽量で、手のひらに収まるコンパクトなデザインが魅力。モノクロディスプレイ、USBポートと2つのボタンが備えられています。
後述のLedgerシリーズとは異なり、保有したい通貨のブロックチェーンごとに個々のアプリをインストールする必要はありません。セットアップ時に、複数の仮想通貨に対応したアカウントが自動作成されます。Trazorシリーズは通貨の交換機能を備えているため、Trezor端末内で仮想通貨の取引が可能です。
Bluetooth接続はできず有線接続が必要なため若干ポータブル性が低いほか、セキュリティ面でも最新のハードウェアウォレットと比べると一段階劣る点には注意。そのため、資産全額を保管するには少々懸念が残りますが、保管先を分散させるため資産の一部を入れておく分には問題ないでしょう。
GoogleやGitHubなどサードパーティー製サービス・プラットフォームのログイン認証を強化する「U2Fセキュリティキー」としても使用できます。
機能面で一定の制限はあれど、比較的低価格で十分な利便性を提供するハードウェアウォレットです。
参考価格:¥16,000(国内相場)
Trezor Model T
最新モデルの【Trezor Model T】は、Model Oneのあらゆる機能をアップデートした完全上位互換。
車のキーを想起させる洗練されたデザインが特徴で、フルカラーディスプレイを備え、操作はボタンではなくタッチスクリーンで行います。マイクロSDカードにも対応しており、より柔軟なデータ移行が可能に。
セキュリティ機能も大幅に強化されています。
Model OneではPIN管理・パスフレーズ管理・デバイス回復のためにパソコンやモバイルを経由する必要がありましたが、Model Tではトレザー内でローカルに処理できる仕様に。これによりオフライン性を強化し、サイバー攻撃のリスクをさらに減少させています。
対応トークンの種類も追加されており、カルダノ(ADA)やリップル(XRP)などModel Oneではサポートしていなかった通貨も保有できるようになりました。
多要素認証セキュリティキーとしての性能もアップデートされており、Model TではFIDO U2Fに加えて「FIDO 2」にも対応。強力なセキュリティキーとして、オンラインサービス全般を保護できます。
参考価格:¥29,000(国内相場)
『Ledger Nano(レッジャーナノ)』フランス発・高い安全性を誇る世界的ハードウェアウォレット
出典:Ledger
Ledger Nanoシリーズはフランスを拠点にする「Ledger社」が開発するハードウェアウォレットで、Trezorと並び世界的シェアを誇る最大手ブランドです。デバイスの操作・管理は、主にLedger Liveソフトウェアを通じて行います。
MetaMask・MyCryptoなどのWebウォレットと連携して使用することができるほか、FIDO U2Fアプリをインストールすれば、Trezorと同様二要素認証セキュリティキーとして使用可能です。
Ledger Nano S
【Ledger Nano S】は、2016年に発売された最初期のハードウェアウォレットの一つ。
他のブランドよりも豊富な種類のトークンをサポートしており、マイナーなアルトコインでも安全に保有できるのがポイント。
洗練された無駄のないインターフェースが特徴で、スクリーン・マイクロUSBソケット・2つのボタンが備えられています。
高度なセキュリティ保護により、高い安全性を実現しています。フランスの国立サイバーセキュリティ機関「ANSSI」によるCSPN (Certification de Sécurité de Premier Niveau:第1レベル安全認証)を取得しました。
ただしバッテリーが内蔵されていないためケーブルを介してパソコンに接続して使用する必要があり、ポータブル性はあまり高くありません。そのため、Nano Sの上位互換であるNano Xへの世代交代が進んでいます。
参考価格:¥8,990(公式)
Ledger Nano X
【Ledger Nano X】は、Ledger シリーズの最新モデルです。
Nano Sと比較すると、より大きく視認性の高いスクリーンの搭載、Bluetooth接続機能・内蔵バッテリー追加によるポータブル性向上など、全面的にアップデートが施されています。
サポートするトークンは5000以上と一般的なハードウェアウォレットと比べて3~5倍で非常に豊富で、新規トークンも定期的に追加されています。そのため、実質的にほぼすべての主要トークンをオフライン環境で保管できるのが魅力でしょう。
メモリ数も大幅に増加しており、仮想通貨の保管やその他機能を追加するためのアプリを一度に最大100個まで保存できます。
Nano Sと同様にCSPNを取得しており、最も安全性の高いハードウェアウォレットの一つと言えるでしょう。
参考価格:23,937円(公式)
『SafePal(セーフパル)』中国発・利便性に特化したハードウェアウォレット
出典:SafePal
SafePalは中国の深センを拠点にする企業が、世界最大手の仮想通貨取引所バイナンスから出資を受け開発したハードウェアウォレットです。
21年には独自トークンのSFPを発行しており、Safepalハードウェアウォレットと同時に所有することで、多様なボーナスやSafePalへの投票権などの特典を受けられます。
厚めのクレジットカードのようなデザインで、スクリーンと6つのボタン、カメラを搭載。サポートするトークン数は3万を超え、他のハードウェアウォレットと比べてひときわ多いのが特徴です。
取引所を経由せず、ウォレットを通じて直接クレジットカードから入金でき、異なるブロックチェーン間のスワップにも対応しているため、バイナンスや複数のDEXといった外部サービスとの柔軟な連携が可能。
価格が極めて安価で、その分セキュリティ面ではその他のハードウェアウォレットに比べて一段劣りますが、多様なトークン・サービスを一括で効率的に管理するには最適です。
参考価格:$49.99(公式)
自分の投資スタイルに合ったハードウェアウォレットを
本記事では、世界各国のハードウェアウォレットをご紹介しました。
妥協のできないハードウェアウォレット選びでは、まだ日本に流通していないものも含めて検討することで、より自身の投資スタイルに合った選択ができるでしょう。
こちらも併せてお読みください。
カードキー型の仮想通貨ウォレット『AT.Wallet(エーティーウォレット)』とは
この記事へのコメントはありません。